しんやです。

今回は、Ubuntu 26.04.1 LTS上のWine 11.0で、楽天証券のMarketSpeed IIを起動できるか試しました。インストーラーが停止した際の状況と、起動を試した結果を記録します。

Windows向けのアプリをLinuxで動かす互換レイヤー「Wine」を使い、参考記事を手がかりにMarketSpeed IIのインストールと起動を試しました。

目次

検証の概要

参考にした記事

楽天証券 MarketSpeedをWineで動かす

参考記事では、Ubuntu 22.04 LTSとWine 9.0を使い、事前にWinetricksからcjkfontsをインストールしています。MarketSpeedのインストーラーは終盤で応答しなくなったものの、インストール自体は完了していたようで、実行ファイルを直接起動できたとのことです。

この記事では、参考記事をもとにMarketSpeed IIで試した結果を紹介します。

今回の環境

  • OS: Ubuntu 26.04.1 LTS(x86_64)
  • コードネーム: resolute
  • Wine: 11.0
  • Winetricks: 未導入(今回の検証では未使用)
  • MarketSpeed II: 楽天証券公式サイトのインストーラーで検証

参考記事のUbuntu 22.04とはバージョンが異なるため、今回使用したOSとWineのバージョンを記録しました。

Wine導入前の確認

作業を始める前に、WineとWinetricksのバージョンを確認しました。この時点では、どちらもインストールされていませんでした。

wine --version
winetricks --version

Wineの導入後に確認したバージョンは、後述のとおりWine 11.0です。

パッケージ情報の更新

Wineを入れる前に、Ubuntuのパッケージ情報を更新しました。

sudo apt update
sudo apt upgrade

apt updateは正常に完了しました。apt upgradeでは、次の2パッケージが段階的な配信中のため保留され、今回アップグレードされたパッケージはありませんでした。

python3-software-properties
software-properties-common

保留されたのは段階的な更新(phased updates)によるもので、Wineのインストールエラーではありません。

続けてWine関連パッケージがすでに入っているか確認しました。

dpkg -l | grep wine

該当する出力はなく、この確認時点ではWine関連パッケージはまだインストールされていませんでした。

WineHQ署名鍵の登録

WineHQのパッケージを利用する準備として、鍵の保存先を作成し、WineHQの署名鍵をダウンロードしてAPT用の鍵形式に変換しました。

sudo mkdir -pm755 /etc/apt/keyrings
wget -O - https://dl.winehq.org/wine-builds/winehq.key | sudo gpg --dearmor -o /etc/apt/keyrings/winehq-archive.key -

鍵ファイルは/etc/apt/keyrings/winehq-archive.keyに保存されました。ダウンロード時の応答は200 OKで、鍵データの取得は完了しました。

WineHQリポジトリの追加とWineのインストール

Ubuntu 26.04のコードネームresolute向けのWineHQソースファイルをAPTの設定ディレクトリにダウンロードしました。

sudo wget -NP /etc/apt/sources.list.d/ https://dl.winehq.org/wine-builds/ubuntu/dists/resolute/winehq-resolute.sources

ダウンロード結果は200 OKで、/etc/apt/sources.list.d/winehq-resolute.sourcesに保存されました。

WineHQリポジトリを追加した後、パッケージ情報を更新しました。

sudo apt update

WineHQのresoluteリポジトリからInReleaseとmain amd64 Packagesを取得できました。更新可能なパッケージが38個あると表示されましたが、Wineのインストール時点でそれらのアップグレードは行われていません。

WineHQの安定版を、推奨パッケージも含めてインストールしました。

sudo apt install --install-recommends winehq-stable

インストール確認にYと入力して続行しました。APTの表示では31個のパッケージが新規インストール対象で、ダウンロードサイズは266 MB、必要なディスク容量は約1.6 GBでした。

インストール後にバージョンを確認すると、Wine 11.0でした。

Wineのバージョンを確認すると、Wine 11.0でした。Winetricksは今回導入していません。

wine --version
wine-11.0

これでWine本体の導入が完了しました。続いて初回設定と日本語フォントの準備を行いました。

Wineの初期設定と日本語フォント

Wineの初期設定を行うため、winecfgを起動しました。設定画面が表示されたので、画面上で設定を進めました。

winecfg

続いてメモ帳を起動した初回に、端末に次の警告が表示されました。

Could not parse file "/home/shinyaishizaki/.local/share/applications/org.gnome.Terminal.desktop": Key file does not start with a group

初回はこの警告が表示されましたが、メモ帳アプリは起動しました。その後、wine notepadを再実行したところ警告は表示されず、メモ帳アプリが起動しました。警告は再現せず、WineからGUIアプリを実行できることを確認できました。

wine notepad

参考記事と同じ方法を試す場合は、Winetricksをインストールしてからcjkfontsを実行します。今回はこの方法を実行せず、UbuntuのTakao PゴシックをWineの仮想Cドライブへ手動でコピーしました。

sudo apt install winetricks
winetricks cjkfonts

以下は今回実際に行った手順です。Takao Pゴシックのパッケージをインストールし、フォント一覧に表示されることを確認しました。

sudo apt install fonts-takao-pgothic
fc-list | grep -i takao

fc-listでは、Takao Pゴシックのフォントファイルが確認できました。

/usr/share/fonts/truetype/fonts-japanese-gothic.ttf: Takao Pゴシック,TakaoPGothic:style=Regular
/usr/share/fonts/truetype/takao-gothic/TakaoPGothic.ttf: Takao Pゴシック,TakaoPGothic:style=Regular

WineのFontsディレクトリを作成し、Takao Pゴシックのフォントファイルをコピーしました。

mkdir -p ~/.wine/drive_c/windows/Fonts/
cp /usr/share/fonts/truetype/takao-gothic/*.ttf ~/.wine/drive_c/windows/Fonts/
ls -la ~/.wine/drive_c/windows/Fonts/

一覧にはTakaoPGothic.ttfがあり、WineのFontsディレクトリへのコピーを確認できました。

MarketSpeed IIのインストール

今回は初代ではなく、楽天証券公式サイトからMarketSpeed IIのインストーラーをダウンロードして実行しました。公式サイトに掲載されていたファイル名はMarketSpeed2Installkits_0001.exeです。

wine "$HOME/Downloads/MarketSpeed2Installkits_0001.exe"

インストールの終盤で処理が止まり、参考記事と同様にコンソールへerr:ntdll:RtlpWaitForCriticalSectionが大量に表示され、インストールが進まなくなりました。参考記事は初代MarketSpeedについての報告であり、MarketSpeed IIでも同様にインストールが完了しているとは限らないため、実行ファイルの有無を確認することにしました。

今回の結果

  • インストーラーの表示・動作: 終盤で進行しなくなった
  • 端末に表示されたメッセージ: err:ntdll:RtlpWaitForCriticalSectionが大量に出力された
  • インストール完了と判断できたか: インストーラー上では確認できず。Wine prefix内には本体の実行ファイルが配置されていた
  • 追加で行った操作: 初代MarketSpeedの実行パスを指定して起動を試した

インストールが途中で停止し、続く起動確認でもエラーになったため、MarketSpeed II上で日本語が正しく表示されるかは確認できていません。

MarketSpeed IIの起動確認

インストール後、参考記事に記載された初代MarketSpeedの実行パスを使って起動を試しました。

wine "$HOME/.wine/drive_c/Program Files (x86)/MarketSpeed/MarketSpeed/MarketSpeed.exe"

しかし、Wineから次のエラーが返り、指定した実行ファイルを開けませんでした。

wine: failed to open "/home/shinyaishizaki/.wine/drive_c/Program Files (x86)/MarketSpeed/MarketSpeed/MarketSpeed.exe"

このパスは初代MarketSpeedのものです。MarketSpeed IIの実行ファイル名やインストール先が異なる可能性があるため、このエラーだけではMarketSpeed II自体の起動失敗やインストール失敗とは判断できません。まずWine prefix内で実際の実行ファイルを探します。

find "$HOME/.wine/drive_c" -type f -iname '*.exe' | grep -i marketspeed

検索の結果、Windows Installerのキャッシュ内にあるファイルのほか、ユーザー領域にMarketSpeed II本体の実行ファイルが見つかりました。

/home/shinyaishizaki/.wine/drive_c/windows/Installer/{73E41A6B-923A-4908-A183-1A1115317FD9}/MarketSpeed2.exe1_1D72DD0286BB46138868A0F24DFB1074.exe
/home/shinyaishizaki/.wine/drive_c/windows/Installer/{73E41A6B-923A-4908-A183-1A1115317FD9}/MarketSpeed2.exe_1E63B5ED374644D5B30EDB4788EFB116.exe
/home/shinyaishizaki/.wine/drive_c/users/shinyaishizaki/AppData/Local/MarketSpeed2/Bin/MarketSpeed2.exe

Windows Installerのキャッシュではなく、ユーザー領域にある本体を指定して起動を試します。

wine "$HOME/.wine/drive_c/users/shinyaishizaki/AppData/Local/MarketSpeed2/Bin/MarketSpeed2.exe"

実行ファイルは呼び出されましたが、コンソールにC++ランタイム関連のfixmeログに続いて_invalid_parameterエラーが出ました。ユーザーからは「無効なパラメーター」というエラーが表示されたとのことで、MarketSpeed IIの起動には至りませんでした。

0124:fixme:msvcp:locale__Locimp__Makexloc (0022FB08 63 00B70428 00000000) semi-stub
0124:fixme:msvcp:locale__Locimp__Makewloc (0022FB08 63 00B70428 00000000) semi-stub
0124:fixme:msvcp:locale__Locimp__Makeushloc (0022FB08 63 00B70428 00000000) semi-stub
0124:fixme:msvcp:locale__Locimp__Makexloc (0022F848 63 00B70458 00000000) semi-stub
0124:fixme:msvcp:locale__Locimp__Makewloc (0022F848 63 00B70458 00000000) semi-stub
0124:fixme:msvcp:locale__Locimp__Makeushloc (0022F848 63 00B70458 00000000) semi-stub
0124:err:msvcrt:_invalid_parameter (null):0 (null): (null) 0

fixmeはWineが未実装または未完全な処理を報告する診断ログで、これだけで直接の原因とは断定できません。今回、起動時に確認できたエラーはerr:msvcrt:_invalid_parameterです。原因や回避方法はまだ特定できていません。

今回の起動結果

  • 初代MarketSpeed用のパスで起動: 実行ファイルを開けず
  • MarketSpeed IIの実行ファイルがWine prefix内に存在するか: AppData/Local/MarketSpeed2/Bin/MarketSpeed2.exeを確認
  • 正しいパスでの起動結果: _invalid_parameterエラーとなり、起動できず
  • ログイン画面まで進めたか: 起動エラーとなったため、到達できず
  • ログイン後に必要な機能を確認できたか: ログイン画面に進めず、未確認
  • 発生したエラー: err:msvcrt:_invalid_parameter (null):0 (null): (null) 0

まとめ

Ubuntu 26.04.1 LTSとWine 11.0の環境でMarketSpeed IIを試したところ、インストーラーは終盤で停止しました。Wine prefix内にMarketSpeed IIの実行ファイルは見つかりましたが、起動するとerr:msvcrt:_invalid_parameterが発生し、アプリを起動できませんでした。

以上から、今回のUbuntu 26.04.1 LTS/Wine 11.0の構成と手順では、MarketSpeed IIを利用できませんでした。ただし、Wineの設定変更などを含む網羅的な検証はしていないため、Wine全般で動作しないとまでは結論づけられません。楽天証券の公式案内ではMarketSpeed IIの対応OSはWindowsのみです。

ログイン画面や各機能の動作確認にも至っていません。Wineでの動作は公式サポート対象外のため、今回の検証環境を実際の取引に利用するのは避けてください。